2018-2019年、Baiduの代わりに新しい「BAT」のBになると言われるByteDance(字節跳動)社が、中国のネット業界で次々に話題を呼びました。
ニュースアプリ「Toutiao」(今日頭條)が中国で大成功し、ショート動画アプリ「Tiktok」が世界に進出…現在バイトダンス社は東京でもオシャレなオフィスを有しています。2012年に創業された若いバイトダンスの話も沢山したいのですが、今日は割愛してバイトダンスの新しいアプリ「Duoshan」(多闪)を紹介したいと思います。
打倒Wechatの宣言「Duoshan」のリリース
2018年の年末に、バイトダンスがリリースしたアプリ「Duoshan」(多闪)は、ToutiaoとTiktokの次に大きな動きだと言われ、中国でかなりの注目を浴びました。

バイトダンスが、「Duoshan」を「ショート動画+ソーシャル」に定義しました。あれ?Tiktokもそんな感じじゃない?と思うかもしれませんが、ここの「ソーシャル」は「知り合い間のコミュニケーション」の意味です。いわゆる、誰でもフォローできるツイッターではなく、友人や同僚とやりとりをするFacebookのソーシャルと近いです。
知り合い間のコミュニケーションといえば、中国人が最も利用しているのはチャットアプリWechatです。日本のLINEとメッセンジャーと似ています。
中国人はWechatで主に文字、音声、スタンプを使ってチャットをする

中国でWechat式のコミュニケーションモードに革命を起こし、新しい世代に新しいソーシャルサービスを提供することは、バイトダンスがDuoshanに与えた使命だと言われます。アプリがリリースされた後、「バイトダンスはDuoshanでWechatと戦うぞ!」と、メディアが盛り上がっていました。
「Duoshan」はどんなアプリ?
では、実際にDuoshanを使ってみましょう!
Douyin(中国版Tiktok)アカウントと繋げられるが、いまのDuoshanをログインするには、中国の携帯番号がやっぱり必要です。ここではキャプチャと合わせて全体の構造、面白い機能をまとめます。
・ メイン機能はSnapchatと似ている
ログインしてトップ画面に遷移すると、チャット一覧が表示されます。画面の一番下に、左から「メッセージ」ボタン、丸の撮影ボタン、右の「世界」ボタンがあります。「世界」ボタンを押したら沢山の動画が表示されます。

友人とのチャットでも、文字より動画メッセージがメインです。

自分で動画を投稿してみたら、「自分のタイムライン」「世界に投稿」のオプション以外に、特定の友人も選択できます。

このまま投稿すると、自分のタイムライン、世界、選択された友人とのチャットに動画が同時に表示されます。
Snapchatが別アプリで提供した Bitmoji機能、いわゆる自分のアバターを作る機能も、Duoshan内で実現しています。

ここまでは、Snapchatと似ていますね。
①友人とのチャット
②「世界」画面で友人ではないユーザーを発見
③友人に動画を投稿できる
④72時間で投稿が消える
⑤自分のアバターとスタンプを作れる
・Snapchatと根本的な違いは「世界」との繋ぎ方
Duoshanでは、「世界」で好きな投稿者を見つけたら、その場で声をかけることができます。相手の個人ページに行ってメッセージボタンを押せば、一対一の会話が始まります。
ただ、互い友人にならない限り、最大三本のメッセージしか送れません。また、送れる情報は、テキストとスタンプだけに制限されます。

「世界」でただ他の投稿を見るのではなく、実際に新しい友だちを作れます。これは魅力的ですね。ただ、多少出会い型っぽい機能でもあるので、今後、この機能はどの方向に行くか予測しにくいです。
・中国の既存SNSとの違いは、やりとりがすべてプライベートであること
Duoshanは、中国人を「ソーシャルの疲れ」から解放したいと宣言しました。WeiboのようなSNSは、様々なユーザーに出会えるが、悪意のある発言や風評被害もひどいのが現状です。友人しか見れないWechatの「モーメンツ」(LINEの個人タイムラインのような機能)ですが、人間関係のために上司や友人のモーメンツに対していいねを押さないといけない、コメントしないといけないことで「まじ疲れる」の声もあがっています。
SNSでの不快な体験

そこでDuoshanの解決策は、全てのやりとりを一対一にすることです。どんなコミュニケーションをしても、相手と自分しか見れないので、「他人に見せる意識」もなくなりますね。Weiboのように、Aが配信した内容のコメント欄でBに対して悪言を言うこともできません。一対一の会話では、友人にならないと大量なメッセージを送れないし、悪意のある言葉を送ったらすぐ通報されます。
この仕組で、現在のSNSのストレスを解消し、より人とのつながりを楽しめると、Duoshanの運営チームが信じています。
・財布機能を注目すべき
最後に注目したいのは、Duoshanの中にある財布機能です。UIのイメージはWechatの財布とやや似ています。
銀行カードを登録すると、Duoshanアカウントにチャージすることができ、もらったお金を銀行カードに戻すこともできます。いまはまだ決済機能がありません。

この財布機能は現在「お年玉動画」にだけ使えます。WechatやAlipayのようなお年玉を動画付きで送れます。
Wechatの「お年玉機能」について詳しくない方はこちらのリンクをご確認ください:
https://remotegirl.jp/wechat-redpocket/
お年玉つきの動画は、左上に「お年玉マーク」がついています。「コミュニケーション促進のための機能です」と、運営チームが話しました。

いまは簡単な機能ですが、それは大きなことを意味しています:バイトダンスもこれからフィンテックに進出する可能性があります。
Tiktok中国版では、すでに動画x商品通販の機能をリリースしています。ショート動画を見たら、作者が設定した関連商品を購入できます。この購買プロセスの革命は、通販サイトを所有するアリババの新しい脅威になるかもしれません。そしてDuoshanは、コミュニケーションツールとして、将来の発展によってWechatの財布機能や決済の脅威にもなるかもしれません。
Duoshanがいつかのタイミングで「お年玉」を利用した大きなキャンペーンを実施し、ユーザー数と銀行カード登録数を一気に増やすことが予測できます。将来は決済に進出してもおかしくありません。フィンテックに関心がある方は、 Duoshanの動きも見逃さないように!
最後に
では、Duoshanのご紹介はここまでにします。
中国のアプリは、成長が非常に速いので、一年間ぐらいでトップアプリになることも不可能ではありません。常にウオッチすることが大事ですね。この中国IT茶室によく訪ねることもその一環です(笑)。
動向を早く掴むことがもちろん、筆者の解析もありますので、それぞれのニュースは一体何を意味するかのヒントになると思います。このブログをご利用して深く中国のITを知りましょう。